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多言語の人口統計学辞書 日本語 ed. 1994
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出生力1の人口学的研究が扱うのは出産2または再生産2に関連した現象である。出生力の英語としてはfertility に代えて出生力1natalityが用いられる場合がある。これらの用語は、人口ならびに部分人口における出産3、厳密にいえば出生4の発生頻度を表す。出産は子供を産む過程である。出生または生きて生まれてきた子供5の出産は、母体から完全に分離した後に子供が示す生命の徴候、たとえば呼吸、随意筋の動き、心臓の鼓動によって後期胎児死亡(411-5参照)とは区別される。かつて全出産数から後期胎児死亡数を除いた数を示すために用いられた有効出生力6という用語は、乳児ないし子供の死亡が起こらないと仮定した場合の出生力の意味で用いられるべきである。出生力格差8(または差別出生力8)は部分人口間の出生力の差を表す。
- 1. 人口学における出生力fertilityの意味については§623も参照せよ。
- 2. 再生産reproduction(名);再生産するreproduce(動);再生産のreproductive(形)。再生産という用語は、生殖procreation の過程というよりも(§711に記す通り)出生と死亡のバランスを表すことが多い。
- 3. 出産birthという用語は今では出生を意味するのが普通。
- 4. 生きて生まれてきたlive-born(形)は出生(生きて生まれてきた乳児)の意味で名詞としても用いられる。
602
受胎1は、精子4による卵子3の受精2の結果であり、妊婦の妊娠状態5あるいは妊娠期間5の開始を指す。受胎の成果6は妊娠経過と共に、順次、胚7、胎児7と呼ばれる。胚が胎児になる瞬間ははっきりとは決まっていない。一部の学者はそれを、子宮内の生命の12週目または3ヶ月目の最後と決めているが、受胎後8週目以後の生命の発達段階も胎児状態と呼ばれることが多い。卵着床8とは子宮9の内膜に卵子が着床することを指すが、この過程は受精後数日で起こる。
- 1. 受胎conception(名);受胎するconceive(動)。
- 2. 受精fertilization(名);受精するfertilize(動)。
人工受精artificial fertilization:人工授精artificial insemination、すなわち性交渉(性行為)(627-2)とは別の過程で達成された受精。 - 3. 受精卵は卵子eggまたは接合子(融合子)zygoteと呼ばれる。
- 5. 妊娠pregnancy(名);妊娠したpregnant(形):あるいはgravid, expectant。一部の学者は、妊娠は卵子着床(602-8)をもって始まると考える。
- 7. 胚embryo(名);胎生のembryonic(形);胎生学embryology(名):胚の発達を扱う学問。
胎児foetus, fetus(名);胎児のfoetal, fetal(形)(§411参照)。 - 9. 子宮uterus(名);子宮のuterine(形)。
603
胎児は妊娠の一時期までは生存不能2、その後は生存可能1といわれる。その区分は、胎児が母体外でも独立に生存しうる時、通常は妊娠継続期間3が28週間を超えた時に起こる。妊娠がこれ以上長く続いた時、(生きている、あるいは死んだ)胎児の娩出は出産4の際に起こる。また早期胎児死亡と結びついた早期の娩出を妊娠中絶5(§604参照)と呼ぶ。出産後約6週間(これは子宮が正常の大きさを取り戻す期間であり、妊娠の確率が低い時期であるが)は産褥期6と呼ばれる。
- 1. 生存可能なviable(形);生存可能性viability(名)。
- 2. 生存可能性を決める最短期間は国によって様々で20~28週の間にあるが、世界保健機構(WHO)は28週を基準期間とするよう勧告している。一般に、妊娠期間は最後の月経last mensesの開始から計算される。これは、受胎の瞬間から計算される真の妊娠継続期間true duration of pregnancyと区別して、慣用的妊娠継続期間conventional duration of pregnancyといわれる。
- 4. 胎児の娩出の実際の過程は分娩delivery, parturitionと呼ばれるが、それは陣痛laborの終了を意味する。出産confinementはこれに加えて胎盤placentaの分離または排出(あるいは後産afterbirth)を含む。
- 5. 妊娠中絶abortion(名):妊娠中絶するabort(動);流産を起こすabortifacient(形、名としても使われる);中絶医abortionist(名):人工妊娠中絶を実行する医師。日常的には、中絶という語は自然妊娠中絶(604-1)の対概念として人工妊娠中絶(604-2)の意味で用いられることが多い。
- 6. 産褥puerperium(名);産褥のpuerperal(形)(424-4参照)。
604
母体からの分離以前に起こる胎児の非人工的子宮内死亡に続く妊娠中絶は自然妊娠中絶1または流産1と呼ばれ、意図的妊娠中絶2または人工妊娠中絶2に対比される。治療的妊娠中絶3は医療上の理由によって行われる中絶である。国によって健康上あるいはその他の理由で妊娠中絶を法律で認めている。そのようなケースは合法的中絶4と呼ばれる。法律に反して人工的に行われる妊娠中絶は非合法中絶5または違法中絶5と呼ばれる。用いられる技術で中絶を分けると、キュレット掻爬による中絶6、吸引掻爬による中絶7、頸管拡張・排出法7、子宮切開による中絶8、分娩誘導法による中絶9がある。
- 6. 頸管拡張・キュレット掻爬術abortions by dilatation and curettage(D&C)とも呼ばれる。
- 7. 吸引掻爬abortions by suctionとも呼ばれる。妊娠のごく早い時期にこの方法が用いられる場合には、月経調節menstrual regulation あるいは月経吸引menstrual extractionという用語が当てられる。
- 9. この方法は、食塩水注入による中絶abortion by saline injectionあるいはプロスタグランディンの注射による中絶abortion by the use of prostaglandinsの場合のように、羊水交換amniotic fluid exchangeを伴なう。
605
慣用的妊娠継続期間(603-3*)で測って少なくとも37週を経た分娩は満期分娩1である。正常期間に満たずに終わる妊娠は早産2または早期出産2と呼ばれ、このような出産による子供を早産児4と呼ぶ。早期でない出生は正期産3または満期出産3と呼ばれる。月足らずの出産5は早産に関わる現象を指す用語として用いられる。多くの国で、妊娠継続期間の推定によらず、発達段階によって出生を分類することが行われている。この分類法では出生時の体重6が2500グラム(5.5ポンド)以下の出生児は未熟8(そのような出生児は未熟児)といわれる。未熟7は弱質9、すなわち異常な弱さと結びつくことが多い。
606
ほとんどの出産は単産1であるが、時には複産2が起こる。同一の出産で生まれる2人の子供は双生児3と呼ばれ、それは一卵性双生児4と二卵性双生児5に分けられる。一卵性複産は一つの卵子が受精後に分割されて生ずる。その結果生まれる子供は必ず同一の性でなければならない。二卵性複産は二つまたはそれ以上の卵子の同時受精によって起こるもので、その結果生まれる子供たちは異なった性を持ちうる。
- 2. 英国の公式用語では、1人またはそれ以上の子供の出生に帰結する分娩を表すために母性maternityという用語が用いられ、妊産婦1人当たりの出生数births per maternityが計算される。
- 3. 複産が3人の子供である場合には三つ児tripletsと呼ばれ、4人の場合は四つ児quadruplets、5人の場合は五つ児quintupletsと呼ばれる。双生児、三つ児、等は分娩の際の出産総数で数えるのが一般的であるが、時には複産を出生児数(生きて生まれてきた子供数)に限って分類する場合もある。
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