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多言語の人口統計学辞書 日本語 ed. 1994
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人口移動統計1は人口移動の量、移動の方向、移動者の属性を明らかにするために作成される。この種のデータの正確さはその作成方法に依存している。というのは、移動統計のほとんどは正確な測定ではなく、近似や推定から成り立っているからである。移動の直接的な測定2は、それが発生した時に移動を記録する制度を必要とする。最も完全な移動統計はすべての居住地の変更を記録する人口台帳から作られる。これによって国内移動および国際移動を計量することができるが、前者の方が後者より満足すべき結果が得られるのが普通である。このような人口台帳が存在しない国では、目的を限定すれば、全人口を対象とはしていないいくつかの行政記録を(移動資料として)利用することができる。すなわち、有権者登録3、社会保障記録4あるいは納税者記録5から国内移動に関する情報を得ることができる。国際移動の場合、船や飛行機の乗客名簿7に基づいて統計を作成することができる。国境を越える人々を数える方法では非常に粗い資料しか作れない。多くの国境交通(803-2*)がある地域では、移民と、居住地を変更しない旅行者8および通過移動(801-11)者とを区別するために特別の手続きを要する。査証9や入国許可証9の数、あるいは居住許可証10や労働許可証11の数は、外国人の入移民を示すものとして利用することもできる。
- 8. 旅行者traveller(名);旅行するtravel(動);旅行travel(名)。
- 9. ある国では海外へ旅行したい住民は出国許可証exit permitsあるいは出国査証exit visasを取得しなければならない。この記録は移民に関する情報源として役立つ。
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センサスや調査によって集められた情報から移動者統計1が得られる。設問の種類にもよるが、これから通常、転入者統計2、転出者統計2、出生地統計3が作成される。この方法は、入移民の場合出身国がどこであったのかを調べることができるが、出移民については調査できないという点で、国際移動の研究方法としては限界がある。
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直接に移動を測ることができない場合にも、純移動は残差法1によって間接的に推計することができる。それによれば、2時点間の人口の変化が自然増加による増減と比較され、二つの数字の差は移動によるものとすることができる。人口動態統計法2は二つのセンサスから調べられた総人口の変化と、センサス間における自然増加(701-7)との間の差を計算するものである。生残率法3は普通、年齢別純移動を推定するために用いられるが、実際の死亡統計を必要としない。その場合、生残率は生命表か、連続するセンサスの比較から得られる。そして生残率をあるセンサスにおける部分人口に適用して、次のセンサス時における年齢別人口の期待数を得る。観察された人口と期待される人口とを比較することにより、部分人口について年齢別の移動による増減を推定することができる。年齢別、現住地別の出生地統計が連続する2回のセンサスで得られる場合に、移動流を間接的に推定することができる。
- 2. 総人口の変化と自然増加の間の差が移動量に等しいことを示す式は、均衡方程式balancing equationと呼ばれることがある。純移動を推定するためにこれを使うには、調査漏れ(230-3)と重複調査(230-5)が二つのセンサスにおいて等しいことを仮定しなければならない。
- 3. この方法の主な種類は生命表生残率法life table survival ratio methodおよびセンサス生残率法national census survival ratio methodと呼ばれる。前進的生残率法forward survival ratio methodでは、センサス間の期首における人口を用いて期末における期待人口を推定する。逆進的生残率法reverse survival ratio methodはこの逆が行われる。平均生残率法average survival ratio methodはこの二つの方法による結果を平均したものである。
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一般的な用語としての移動率1は、ある人口における移動の相対的な頻度を計るためのあらゆる率を指す。これらの率は特に指示がない限り、年間移動率2と解さなければならない。それ等は、ある期間における年平均人口に対する年平均移動数の比率として計算される。年間純移動率3と年間総移動率4は、純移動量や総移動量に関する適切な情報を用いて同様に計算される。移動効果指数5あるいは効果指数5は、流入量と流出量の合計値に対する純移動量の比率である。この指数の値の範囲は、到着と出発の数が等しい時に0となり、移動がまったく一方向的である時には1になる。
- 2. 移動率の計算には期首人口や期末人口、あるいは当該地域人口の人年等の他の分母も用いられる。
- 5. また、移動効率指数index of migration efficiencyあるいは効率指数efficiency indexともいう。
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移動者割合1とは、ある期間における移動者の数が出発地の人口または目的地の人口に占める割合である。流出者割合2はその地域から出て行ったと報告された数を、期首に住み期末に生きている人口で割ることにより得られる。この指標は移動リスクを持つ人口の移動確率を測るもので、特に、移動を別個に計算する方法を用いる人口推計の準備のために使われる。しかし実際には、移動者割合を計算するのに他の人口が分母として使われることが多い。同様に、流入者割合3は、ある地域のある期間における流入者数を期末の人口で割ることにより求められる。しかしその分母は、期首の人口あるいは期首と期末の人口の平均でもよい。生涯流入者割合4は出生地の情報に基づき、その地域の外で生まれた人の数をその地域の調査人口で割ることによって求められる。生涯流出者割合5は、ある出生地以外に住んでいる人の数をその地域で生まれた人の総数、あるいは現在もなおその地域に住んでいる人の数で割ることによって求められる。移動格差指数6は、移動者の年齢(322-1)、職業(352-2)、教育程度(342-1)などの属性が明らかな場合、移動者をその目的地の彼等以外の人口と対比するものである。この指標は、問題にする属性を持つ人口の移動者割合の、全人口の移動者割合に対する比率を1から引いたものである。移動格差指数は、ある属性の人口が残りの人口と同じ移動行動を持っている場合には0になる。移動選択性7という用語は、流入者と彼らの出発地の人口との間を比較したものである。
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縦断的(コウホート)移動分析1は、ある期間における個人の連続的移動に関する情報を要する。この情報は普通、人口台帳(213-1)や遡及的調査(203-8)によってしか得られない。第一順位移動確率2等のようないくつかの精密な指標は、このような形の情報から得られる。これは、x歳の移動未経験者3がx+n歳になるまでに初めて移動を経験する確率として定義される。これらの確率は移動未経験者表4を計算するために用いる。後者は、生命表(432-1)の考え方を利用して、二要因(移動と死亡)減少確率による移動未経験者生残スケジュール表5を作成することができる。同様に、移動順位別移動確率6や、ある順位の移動経験者のうち、ある期間内に次の移動をしなかった者の割合も計算することができる。全移動順位移動率7は、あるコウホート(116-2)のある年の平均人口規模に対する、その年の全順位移動数の比率である。ある時点までのコウホートのこれらの率の総和は、死亡がないと仮定した場合の平均移動回数8となる。もし一連の生残率を、年齢別全順位移動表9に適用すれば、ある年齢に達した個人が、仮定されている死亡率の下で、以後経験するであろう平均的な移動回数を推定することができる。
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ある期間における2地域間の移動者数を明らかにするためによく用いられる指標は、移動性向指標1である。これは地域Aから地域Bへの移動者数を、期末におけるBの住民数と期首におけるAの住民で期末まで生き残る者の数との積で割ったものである。この指標を、全国人口を二乗した値に対する移動総数の比率で割ると、移動選好指数2が求められる。その分子が純移動流に限定される場合、そこで得られる指標は地域間交流率指標3と呼ばれるものである。移動流の効率性4は純移動流の絶対値を総移動流(805-10)に対比することにより測られる。
- 1. この指標は、任意に選ばれた期末に生存している2人の個人、すなわち期首に地域Aに住んでいた人と期末に地域Bに住んでいる人が同一である確率と解釈できる。データの制約により、この指標を計算するためには他の種々の分母を必要とする。
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移動モデル1は二つの大きな種類に分けられる。第1のものは二つの地域間の移動流(803-9)を社会的、経済的、人口学的変数に結び付けるものである。これらの変数はしばしば出発地に対する反発2を特徴づける押し出し要因2と到着地への誘引3をもたらす牽引要因3、そして二つの地域の間に介在する障害要因4に分類されることが多い。これらのうち、最も簡単なモデルは重力モデル5である。2地域間の流れはこれらの地域の人口の大きさに比例し、その間の距離6の何乗かに反比例するとする。他のモデルでは、移動の流れは到着地の機会に比例し、到着地と出発地との間の介在機会(介在要因)7に反比例する。第2の種類のモデルは確率モデル(730-5)である。それは人口ではなく個人に関するもので、移動する確率を年齢やそれまでの移動歴等いくつかの個人的な属性に関連させるものである。
- 5. 別名パレート型モデルPareto-type models。
- 6. 距離は様々な方法で測られる。たとえば直線距離、経路の距離、介在する地域の数等によってである。
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