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多言語の人口統計学辞書 日本語 ed. 1994
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人口統計1は人口に関する数値データ2のことで、観測値3に基づくものである。適切な調査用紙(206-1)によって観測値が収集された4後、明らかな不整合性を除くため、これらの資料は編集され5、点検される5。データは共通の特性を持った特定の集団(グループ)7、あるいは階級8ごとに製表される6。データ処理9は収集から分析(132-1)に至るすべての段階を含む。
- 1. 統計statistics(名);統計的なstatistical(形);統計学者(統計家)statistician(名):統計の専門家。
- 4. 収集するcollect(動);収集collection(名)。
- 5. 編集するedit(動);編集editing(名)。
点検するverify(動);点検verification(名)。 - 6. 製表するtabulate(動);製表tabulation(名)。
- 9. 処理するprocess(動);処理processing(名)。
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処理と製表をする前のデータは通常、生データ1ないし未加工データ1と呼ばれ、処理と製表をした後のデータは基礎データ1ないし第一次データ1と呼ばれる。基礎データは通常、統計表4の形でまとめられた絶対値3の系列2からなる。このような表のデータは通常、年齢や子供数といった特定の変数5ないし変量5に関して分類されたり、特定の属性6ないし特性6(すなわち性、配偶関係等)に関して分類されたりする。データがいくつかの変数ないし属性に関して同時に分類されるような表は、クロス集計表7ないし関連表(分割表)7と呼ばれる。要約表8は個別表9ほど詳細でない情報をもたらす。
- 1. データが分析単位としての個人(110-2)に関するものである場合、それはミクロ・データmicro-dataと呼ばれる。集計データaggregate dataないしマクロ・データmacro-dataは、たとえば国家や一国内の行政単位といった個人以外の分析単位に関するものである。ミクロ・データは実地調査(203-5)や人口動態登録簿の標本から得られる。ミクロ・データの新たな利用源としてセンサス公共利用標本census public use sampleがあるが、これは関心をもつユーザーの分析目的のために供せられるセンサスの個票から、系統抽出ないし無作為抽出した標本である。
- 7. 母集団内における単一の変数ないし属性の分布を示す表は、一般的に度数表frequency tableと呼ばれる。
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基礎データの利用には一般的に二つの局面がある。分析1は観測値の構成要素(規模、構造、外的要因、研究対象の現象)を分離することを目的とする。総合2は様々な方法で分離された構成要素を再結合する過程である。いずれの局面にも様々な名称で呼ばれる指標4の算定3ないし計算3がある(§133参照)。基礎データとは対照的に、これらの指標は算定結果6と呼ばれる。より限定された意味での指標7ないし指数7は、基準値8に対する特定の数量の値を示す比であるが、基準値は通常100と置かれる。いくつかの指標は複雑な状態を示す良い尺度9であり得る。たとえば、乳児死亡率は人口の保健衛生状態の尺度として用いられることがある。
- 1. 分析analysis(名);分析的なanalytical(形);分析するanalyze(動)。
- 2. 算定するcalculate(動);算定calculation(名);計算機calculator(名):少量の算術的、統計的演算を容易にするために作られた最小限ないし少量のデータの記憶能力を備えた機械。
計算するcompute(動);計算computation(名);コンピューター(電算機)computer(名):大規模なデータ・セットの転送、保管、演算を遂行するように作られた機械システムで、算術的、統計的演算のほかにデータの論理的処理も可能にする。かつてcalculatorとcomputerという言葉は計算に従事する人を指すために用いられた。
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分析(132-1)の第一段階は、人口総数ないし事象数を他の総数ないし数値に関係付けることから始まる。結果としての指標には様々な名称が与えられている。もっとも一般的なものは比(比率)1で、一つの数値を他の数値で除して得られた商である。構成比2は一部分の全体に対する大きさの関係を示す比率である。百分率3は100当たりで表示された構成比である。率4は特定の期間、通常は1年間における特定の人口ないし部分人口における特定の事象の相対度数5を指す特別な種類の比である。以上のような用語法が推奨されるが、率という用語は着実に意味を広げており、比率の同義語として不正確に用いられることがしばしばある(たとえば、労働力率であるが、これは実際のところ構成比である)。
- 2. 構成比proportion(名);構成比のproportional(形)。
- 4. 率は一般的に1000人当たりで表示され、追加的な限定なしに“率”という用語が用いられる場合には一般的に“1000人当たり”と解される。しかし、一部の率は1万人当たり、10万人当たり、100万人当たりで表示される。たとえば、死因別死亡率(421-10)がそうである。一方、1人当たりないし100人当たりで表示される率もある。“率”という言葉は省略されることがあるため、“1000人当たり10の死亡”といった表現が行われることもあるが、これは勧められない。
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反復不能な事象の相対度数(133-5)はそのような事象の確率1の経験的尺度とみなされることが多い。このことは、分母に現れる全個人が何らかの形で危険(リスク)にさらされた3ことを前提とする。すなわち当該事象が彼らに生起する機会2ないし危険(リスク)2がなければならない。英語の場合の“リスク”という用語は、当該事象が望まれないものであるということを決して意味するものではない。そのため、“結婚のリスク”という用語が使われる。人口を異なる下位集団に区別することが多いが、そこでは当該事象が生起するリスクの個人差は、人口全体における差異ほど大きくはない。リスクに関していえば、相対的に異質的な5全体人口よりも部分人口の方が同質的4である。全体人口に関する粗率(普通率)(136-8)に対して、このような部分人口について算定される率は特殊率6と呼ばれる。 総率7は総出生率(633-8)の場合のように年齢制限を伴うことがある。
- 1. 確率probability(名);蓋然的なprobable(形)。
- 4. 同質的なhomogeneous(形);同質性homogeneity(名)。
- 5. 異質的なheterogeneous(形);異質性heterogeneity(名)。
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年齢別特殊率1は年齢各歳ないし年齢階級について算定される。持続期間別特殊率3は、結婚や過去の出生といった人生の出発点的事象4ないし事象起点4から経過した時間を考慮に入れる。中央率10は、1年間あるいはそれ以上の期間(しばしば5年間)における事象数を平均人口6あるいは年央人口6で除したり、当該年ないし当該期間において当該事象が生起するリスクにさらされた人年7で除することによって求められる。人年は1年間ないし1期間にわたって観察された集団の全個人がリスクにさらされた時間の合計を年数によって表示したものである。“率”という用語は、以上とは違った計算方法に用いられることがあり、1年ないし1期間における反復不能事象の数を、ある年あるいはある期間の期首における対象コウホートの規模で除す場合がそれである。この指標は減損確率5、ないしはより単純に確率5と呼ばれることがあり、すでに定義された中央率と対比される。この文節では“期間”という用語は時間の長さを意味してきた。しかし、期間率8という表現にあるように、期間という用語は特定の時間の意味において用いられ、特定の暦年ないし期間のことを指す。これはコウホート率9ないし世代率9と対比される。
- 5. フランス語でこういう場合に用いられる率、指数quotientという用語が、時に英語で用いられることがある。
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不完全な観察、あるいは統制の不十分な観察に基づくデータは暫定的1と呼ばれる。このようなデータは、観察が完全になった段階で確定的2データによって置き換えられる。これらのデータに基づく率はそれぞれ暫定率3と確定率4と呼ばれる。すでに数値が公表された後に新しい情報が利用可能になった場合、改訂率5が発表されることがある。補正率6という表現は通常、欠陥データないし不適当な手法によって誤解を与えるような算定結果や、当座の目的のためだけの限られた価値しかないような算定結果が生じ、これらを補正するための努力が行われたことを意味する。たとえば、調査漏れについての補正、人口移動についての補正、季節変動についての補正といったことが行われたことを意味する。標準化率7ないし調整率7(訳注1)は、一つの変数、たとえば年齢が一定に保たれた場合にもう一つの変数、たとえば出生率や死亡率について異なる人口集団の比較を可能にするように計算されるものである。補正率7という用語は一部の人口学者によって標準化率の同義語として使われている。標準化されない率は粗率(普通率)8(訳注2)と呼ばれる。これは実際の趨勢(トレンド)を測定するために用いられることもあるが、異なる構造(144-4)をもつ人口集団を比較する場合に無批判に用いられると、誤った推論が導かれる可能性がある。
(訳注1)わが国では特に死亡率について、訂正率という言葉が標準化率という言葉とともに用いられてきたが、最近、厚生省大臣官房統計情報部は訂正死亡率という言葉の代わりに調整死亡率という言葉を使うようになった。
(訳注2)わが国では人口指標として粗率よりも普通率(たとえば普通出生率)という言葉が用いられることが多かったが、普通率という言葉は往々にして誤解を招きやすいことがあるため、本辞典では粗率という用語を第一義的訳語として用いる。
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人口指標(132-7)はほとんどの場合、特定の観察期間1に関するものである。このことは特に大部分の率(133-4参照)について当てはまる。年率2は12ヶ月の期間に関するものである。観測値が複数年次について収集されて平均される場合、その算定結果に平均年率3という用語が用いられることが多い。1年間以外の期間について率が算定される場合には、適当な数値を乗ずることによって年単位に換算される4ことがある。瞬間率5が算定されることもあるが、これらは無限小の期間に関するものである。たとえば、瞬間死亡率(431-4)や瞬間増加率(702-5)がある。
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コウホート分析(103-4)の第一の目的は、人口現象の発生頻度1とテンポ2ないしタイミング2の研究である。一つの反復不能事象(201-4)から始まったある現象の発生頻度は、その事象の最終頻度3あるいはその補数によって測定される。最終頻度は、外的影響がないとした場合に、該当するコウホート(116-2)の存続中にその事象を経験したであろう人々の構成比を表す。出生や人口移動といった反復可能事象(201-5)の発生頻度は、同じく外的影響がないとした場合に、コウホート一人当たりの平均事象数4によって測定することができる。テンポないしタイミングは、研究対象としての人口事象の、時間の経過に伴うコウホート内の分布と定義できる。横断面分析ないし期間分析(103-5)の結果は種々の方法で測定される期間指標5によって要約的に表現されるが、これはコウホート指標6と対比される。普通に用いられる技法としては、それぞれ異なる年齢や持続期間について観測された人口現象の発生率を仮設コウホート7ないし合成コウホート7とみなすものである。
- 3. この最終頻度あるいはその補数は、研究対象に応じてさまざまな名称がつけられてきた。パリティ拡大率(637-7)、生涯未婚率(521-1)等である。こういう場合に構成比という用語は用いず、観察された横断面的構成比のために残しておくことが望ましい。たとえば、生涯未婚率は、センサスで記録される所与の年齢における未婚者割合とは区別されねばならない。
- 4. 観察された一人当たりの平均事象数と、コウホート内で死亡のような外的影響がない場合に観察される同種の事象の平均的数値に、同じ名称をつけるのは珍しいことではない。しかし本当は別の言葉が用いられるべきであって、たとえば、既往出生児数(637-2)は累積出生率(636-2)と区別するべきである。
- 5. 横断面分析と仮設コウホート分析は本来の意味のコウホート分析研究以前に行われていたので、期間指標という名称がコウホートに関するものであると考えられている節がある。期間とコウホートの概念の混用は明らかな矛盾を招くことがある。たとえば、多数の遅延されていた出生が後になって生み戻された場合には、パリティ別出生確率が計算上数年間にわたって1を越えることもあり得る。
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